相対性コム デ ギャルソン論 ─なぜ私たちはコム デ ギャルソンを語るのか
元コムデギャルソンマニア
の私としては見逃せない本と言えるでしょう!
…と言う割には図書館で借りて読みましたw
本に2600円はなかなか出せません。
しかも発売からかなり時間が経ってしまいました。
発売後すぐに書評をリリースされたElasticさんから8ヶ月も遅れています。
これだけ遅れた理由は図書館の予約がかなり順番待ちしていた上に
一度順番が周って来たのに気づかずにスルーしてしまい、
もう一度予約し直したからです。
まぁこれだけ遅れた上にAmazonで新品の扱いのないニッチな本のレビュー、
あまり需要はないでしょうが
私としては結構色々発見があった本なので、
軽くレビューさせてもらいます。
まず。
今回久し振りにコムデギャルソンに関する文章を読んで一番強く思った事なのですが。
コムデギャルソンを論じる時に
ジェンダー、脱構築、ポストモダン、黒の衝撃、「こぶドレス」
はNGワードにしませんか?
わかるんですよ、これらのワードで論じたいのは。
ここらへんがコムデギャルソンを論じる上での醍醐味でしょう。
でも、もうお腹いっぱいなんです。
今まで沢山読んで来ましたから。
これらのテーマに関しては。
でも、今更これらのテーマ論じられても
新しい発見はなかなか出来ないのではないでしょうか。
この本にもいくつかこれらのテーマで論じられた文章がありましたが、
正直かなり斜め読みさせてもらいました。
しかししかし。
勿論この本のテーマはジェンダーや黒の衝撃だけではありません。
書き手が多彩なのでかなり楽しんで読める
面白いテーマのものもありました。
こんなに付箋を貼ったくらいです。
なので今回は
この本で私が初めて知った事や面白いと感じた切り口に関して
いくつかあげていこうと思います。
まず、
08 装飾の排除から、過剰な装飾へ
「かわいい」から読み解くコムデギャルソン
こちらの冒頭。
コムデギャルソンはかわいい。(P.169)
この一文で持って行かれました。
「かわいい」の切り口でコムデギャルソンを語るのって今まで無かったのではないでしょうか。
そうなんです。
コムデギャルソンは「かわいい」のです。
そんじょそこらのブランドなんか比べ物にならないくらいに。
コムデギャルソンの顧客の中にこの「かわいい」に惹かれている人が
かなり多数いると思います。
その証拠がストリートで見かける着こなしでしょう。
ラフォーレ原宿系のポップなコーディネイトにコムデギャルソンを取り入れている若者や
ピンクハウスと組み合わせたオバサマまで幅広く
「かわいい」をファッションの価値判断基準にしている人達に
コムデギャルソンは支持されています。
それだけコムデギャルソンにとって「かわいい」というのは
重要なキーワードだと思います。
が、その割にこの項のページ数が少ないの残念です。
アイテムやコレクション画像も載せて
もっと具体的に論じて貰ったらかなり面白いものになったと思います。
14 私は、コムデギャルソンによって、選曲家という仕事に出会えた。
<インタビュー 桑原茂一>
どうでもいいですがこのタイトルの読点の打ち方、なんか気になりますね。
さて、この項で印象的だったのは川久保玲の仕事の仕方。
NHKスペシャルでもコムデギャルソンのパターンさん達が同様に語っていましたが
コレクションの音楽を選曲する桑原氏に対してもコレクションに関する説明はなく、
何が駄目なのか、どこが駄目なのか、どうしたいのか。
ともかく、何か言ってくれないともう選べないって言うと、
「なんて言っていいかわからないのよね」って、
それで終わっちゃう(P.317)
という一緒に仕事をする上では絶望的なコミニュケーション。
パリに着いてショーのミーティングをしている時に
「全部やめて、違うのにしない?」(P.318)
と今までやってきた事を全部ひっくり返してしまうなんて事件もあったそうです。
15 コムデギャルソンにみるブランド・コミュニケーション
販促ツールとそのスタイルがいかにインパクトを与えたか
こちらも今まであまりスポットライトが当たらなかったDM等に関しての項。
ここで私はコムデギャルソンのロゴが
村田東治
というグラフィックデザイナーによるものだと知りました。
ググってみましたが、Wikipediaにはページがなく、
他にも略歴などが確認出来るものがありませんでした。
その中で目を惹いたのがTwitterのこちらのつぶやき。
https://twitter.com/innkyo/status/26663091808
今も輝きを失わないコムデギャルソンのロゴ
の作者がわかったのは大きな収穫でした。
16 COMME des GARCONS以前のコムデギャルソン
-1970年代が可能にしたCOMME des GARCONS
ここがこの本のメインコンテンツと言えるのではないでしょうか。
私も今まで殆ど知らなかった70年代のコムデギャルソンの姿です。
当時コムデギャルソンを掲載していたアンアンやハイファッションでの
扱われ方は黒の衝撃以降のそれとは全く違っているので一見の価値ありです。
と、いう感じでかなり分厚い本なので
面白いポイントも色々ありました。
が。
かなりマニア向けの本でしょうね。
コムデギャルソンがかなり好きな人でないと
読み進めるのは苦痛ではないでしょうか。
ま、それは作り手側もわかっているのでしょうが。
どうもコムデギャルソンに関する文章は
哲学的で堅苦しくなってしまいがちなので、
この本で取り上げられていた「かわいい」の切り口のように
カジュアルにコムデギャルソンを分析した本なら
今後読んでみたいな、と思いました。
相対性コム デ ギャルソン論 ─なぜ私たちはコム デ ギャルソンを語るのか
※注
ここで述べられている内容は書き手の所属する組織・団体の主張を
代表・代弁するものではなくあくまでも筆者一「個人」としてのものです。