【このエントリのポイント】40年間の日本のファッションが全てわかります。販売員、デザイナー、などファッション業界人だけでなく、服飾専門学生、カルチャー、音楽好きにも超お薦めです。
こんにちは。前々から気になっていた自室の整理整頓が出来てせいせいしたファッションアナリスト山田耕史(@yamada0221)です。
・「あの動画」の書籍版
先日渋谷にリサーチに行った時に、渋谷MODI(旧マルイ)のHMV(HMV&BOOKS TOKYOというそうです)に寄りました。久し振りに行くと、HMVの素晴らしさに感動したのですが、その話はまた今度でも。今回ご紹介したいのはその時にたまたま発見したこの本です。
今年、ビームスは創立40周年のアニバーサリーイヤーで色々面白い事をやってます。その一環で作成されたこの動画。1976年から2016年までの日本のファッションの変遷をまとめた動画です。
高いクオリティでネットでもかなり話題になっていましたが、今回ご紹介する本はこの動画の書籍版、という感じです。
使われているスタイリングも同じ。巻末のスタッフリストを見てみると、年代ごとに担当スタイリストがついてスタイリングしているようです。例えば1976〜1985年は島津由行氏、1996〜2005年は二村毅氏、というように錚々たる有名スタイリストが参加しています。
・超充実のコンテンツ!
コンテンツの軸になるのは↑の動画に登場していたスタイリング写真。1年ごとにメンズ、レディスそれぞれ1スタイルずつ登場しています。
こんなスタイルヒストリー的な本でよくあるのが当時撮影された画像をそのまま使っているもの。ですが、本書は全てのスタイルを新しく撮影しています(だから↑の動画みたいな事が可能だった訳ですが)。なので、基本的に全身のスタイリングが見られますし、全身でない場合もそれぞれのスタイルのキーとなる部分にフォーカスがされているので、どこに注目すべきなのかがよくわかります。当時の写真を使う場合だと、「このスタイリングでどんなシューズを履いているのか知りたいけど、この写真じゃよくわからない!」みたいな事がよくあるのですが、本書にはそれがゼロ。これだけでも充分資料価値はあるかと思います。
・資料価値あり過ぎ!
それぞれのスタイルには別ページで解説が加えられています。
アイテムが平置きで見られるのも嬉しいですし、どんなブランドが使われているのかもわかるので本書で「こんな格好してみたい!」なんて思った人には嬉しいのではないでしょうか。
そしてそれぞれの年代で注目のカルチャーについては詳細な解説ページが設けられています。この目次のページの「CULTURE」がそれに当たります。
いくつか例を挙げると、「JJガール」「ギャル」といったファッション系から「カフェブーム」「ミニシアター」などのカルチャー系、「キースへリング」「ミッドセンチュリー」のデザイン系、「AKIRA」「エヴァ」などのアニメ系までバラエティに富んだ内容。
「裏原」に関しては4ページにわたる考察記事。
かなり読み応えがありました。他にもパンクのページは高木完氏のコメントだったり、
DCブランドのページはメンズビギの菊池武夫氏とメルローズの横森美奈子氏の対談になっていたりと超豪華。
これらのページだけでも充分読み物として楽しめる本になっています。
・多分これだけ集まるのは空前絶後な超豪華コメント陣!
それぞれの年代にはファッションに縁の深い有名人のコメントが掲載されています。
その顔ぶれが超豪華!軽く例を挙げると大川ひとみ氏、大貫憲章氏、野宮真貴氏、PUFFY、軍地彩弓氏、真鍋大度氏、石川涼氏というなど豪華でバラエティに富んだ方々。この企画でないとこれだけの人のコメントがひとつの本に集約されるという事はなかなか無いのではないでしょうか。
この本で唯一少し残念な点が1976年がスタートという点。ビームス創立の年なので企画的にも仕方のない事なのですが、出来れば戦後からやって欲しかったなーと思います。が、本書は日本のストリートファッションの全てがあると言って過言では無い本になっていると思います。写真と文章共にかなりのボリュームなので買って数日経った今でもまだ全然読みきれていません。これが1,528円とは!本当に安いと思います。
・ビームスは凄い
この本の他にもビームスは面白い本を色々出しているようです。その皮切りになったのが2年前に出版された、ビームススタッフのお家紹介本。以前当ブログでもご紹介しました。(オシャレなショップ店員のオシャレな部屋を覗き見。【書評】BEAMS AT HOME|山田耕史のファッションブログ)
私は知らなかったのですが、第2弾、第3弾も出ているようです。
また、こちらも渋谷HMVで発見したのですが、ガイドブックも出しています。
へーこんな本あるんや。やっぱビームス面白いなぁ。 pic.twitter.com/wS8GKPT0Lh— 山田耕史 (@yamada0221) 2016年11月2日
沖縄はわかるのですが、我が故郷神戸のガイドブックとはまた変化球な…とは思うのですが、こういった発信って素晴らしいですよね。他のセレクトショップでやっているところは無いんじゃないでしょうか。
こういった取り組みを見ていると、ビームスは他のセレクトショップとは一線を画しているような気がします。他のところは洋服、雑貨、そして最近では飲食まで手掛けるセレクトショップも増えましたが、ビームスはそれらも全て内包する「カルチャー」を発信しているように思えます。世の中全てのモノゴトのから「ビームス」というフィルターを通してキュレーションするのがビームスの役割、って感じですかね。
ファッションの企業が服だけで勝負出来る時代ではもう無い事は明らかだと思います。確固としたビジョンとセンスを持ち、それを武器に様々なモノゴトをキュレーションしたり、異分野とコラボレーションするか。そういった視点で見ると、日本のファッション企業で最も将来性があるのはセレクトショップ、その中でもビームスが最注目の企業だと思っています。
最後までご覧いただきありがとうございました!
ファッションネタはTwitter(@yamada0221)でも呟いていますのでよろしければフォローしてみて下さい。