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アパレル企業はファストファッション型しか生き残れないと思う理由。









(2016/12/13加筆)
こんにちは。明日はリサーチついでにこれに行こうかなと思っているファッションアナリスト山田耕史(@yamada0221)です。




少し前に話題になっていた三陽商会を例にあげるまでもなく、大小問わず多くのアパレル企業の苦境は続いているようです。

バーバリーなき三陽、再建は「しばしお時間を」:日経ビジネスオンライン

それはなぜか?私はその原因がアパレル企業PDCAサイクルの遅さにあると考えています。

PDCAサイクルって?という方はこちら↓をご覧下さい。
PDCAサイクルをすごく簡単に説明します | harappa[はらっぱ]


・服が顧客に届くまでの時間


私は約8年間ファッション企画会社で働いていました。ざっくり言うとアパレルメーカーや小売店にトレンド情報を提案するというのが主な仕事。私たちの提案を参考にアパレルメーカーは服をつくり、小売店はメーカーから服を仕入れたりするのですが、私たちが提案するのはたいてい実際に商品がお店に並ぶ1年以上前。一般的なお店ではどんな服をつくるのかを考え、実際につくり、それがお店に並ぶまでに1年以上の時間がかかっているということです。

当たり前ですがそこまで時間がかかるとPDCAサイクルの回転も遅くなります。PDCAサイクルが回るのは「年」単位になってしまいます。「年」単位になるとPDCAサイクルを回すのは難しくなってしまいます。どういった経緯でその服を企画したのか、去年のことになると、誰でも記憶があいまいになってしまいます。また、服が売られるまでには企画、生産、流通など様々な要素が関係しているので売れなかった場合の責任の所在もあいまいになってしまいます。ファッション業界はビジネス要素の数字化がほとんどされていないので、この服が売れなかったのはデザインのせいなのか、素材がイマイチだったのか、売り出した時期が悪かったのか、などなにが原因なのかわかりにくいのです。

・IT業界のスピード感

私はファッション企画会社を退職後、ITベンチャー企業に転職しました。そこではウェブサービス、EC、アプリの企画運営などに携わりましたが、ファッション業界とIT業界との最大の違いはビジネスのスピード感だと思いました。

IT業界のPDCAサイクルは遅くても「週」単位、早ければ「日」や「時間」。「分」単位で回されているサービスもあるでしょう。ユーザーの反応が悪ければその原因を探り、すぐに改善する。このフットワークの軽さがIT業界の特徴です。

バナーの大きさをこう変えたらアクセス数はこれだけ下がった。この場合悪かったのはバナー。だからバナーを改善すればアクセス数は回復する。結果がアクセス数などの数字ではっきりとしているので責任の所在も明確ですし、改善した場合の効果もわかりやすいです。


・ファストファッション好調の要因


私は近年ファストファッションが好調である要因はPDCAサイクルを早く回せているからなのではと考えています。

H&MやZARAなどのファストファッションブランドのビジネスはとても早いスピード感だそうです。ZARAは企画から店頭に並ぶまで通常2週間、早ければ1週間程度しかかからない、というようなことも本で読んだ記憶があります。(多分この本だったかと…山田耕史のファッションブログ: こんなにも違う、ZARAとユニクロ【書評】「ユニクロ対ZARA 」

企画してから結果が出るまでがこれだけ短時間だと、IT業界とあまり変わらないスピード感でPDCAサイクルが回せるでしょう。

私は最近のユニクロの伸び悩みとGUの好調もこのPDCAサイクルが関係しているのではないかと思っています。詳しくは明らかにされていませんが、GUはH&MやZARAと同じファストファッション型ビジネスモデル。一般のアパレル企業よりも早いサイクルでPDCAサイクルは回っているでしょう。

それに対し、ユニクロは既存アパレル企業と同じように1年以上前から企画が決められるビジネスモデル。こういったビジネスモデルは昨今の目まぐるしく変わっていく消費者のニーズに応えにくくなってしまいます。


・アパレル企業がこの先生き残るには


今までのファッション業界はパリやミラノのコレクション(ファッションショー)を頂点としたピラミッド柄になっており、コレクションで発表された最先端のファッションが時間をかけて一般大衆に浸透していくという構造になっていました。オリジナリティのあるファッションの発信源はコレクションを発表するようなブランドのファッションデザイナーだけに限られていたのです。

しかし、90年代から徐々にストリートファッションのが発信力を持ち始め、00年代のIT革命、10年代のSNSの浸透によりコレクション、ストリートの枠を超え誰もが最新のファッションを発信できるようになったのです。

コレクションブランドでさえ「SEE NOW,BUY NOW」をキーワードにコレクションで発表された服がすぐに買えるようになっている昨今、今までのアパレル企業のように1年以上の時間をかけてコレクションで発表されたデザインを自社の顧客のファッション感度、好み合うように咀嚼し、服をつくるという悠長なスピード感のビジネスモデルはもう生き残るのは不可能かもしれません。

今はそんな時間のかかるものづくりをしている間に消費者が求めるファッションは変わっていってしまっています。情報のシャワーを浴び続けている消費者に「欲しい!」と思わせるようなファッションをつくるには、ネット・リアル問わず世界中にアンテナを張り巡らし今流行っているものを即つくり店頭に並べ、顧客の反応を吸い上げPDCAを早く回していくようなスピード感のあるファストファッション型ビジネスしか生き残れないかもしれません。

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