【このエントリのポイント】ファストファッションの全貌がわかる一冊。
こんにちは。
今週久し振りの出張なのにその日の天気予報が大雪で愕然としている
ファッションアナリスト山田耕史(@yamada0221)です。
今回はファッション好き、ファッション業界関係者には是非読んで欲しい一冊です。
ファストファッション: クローゼットの中の憂鬱
ファストファッションを中心に現在のファッション業界が抱える問題を浮き彫りにした一冊です。
参考になる点が多く、これだけ付箋を貼ってしまいました。
主な舞台はアメリカ。
ですが現在の日本もほぼ同じような状況と言えるでしょう。
・大量消費の先駆け、GAPの大躍進
本書で主に取り上げられているファストファッションブランドは
H&M、FOREVER21、ZARAなど。
第一章ではこれらのブランドの普及により
現在服の価格がいかに下がり、どれだけ多くの服が消費されているかが語られています。
ファストファッションブランドとは呼べませんが、
現在の服の大量消費の先駆けとなったブランドがGapだそうです。
Gapの売上高は1991年までに20億ドルに達し、
その後10年間Gapが毎日新店舗を少なくとも1店世界各地のオープンし続け、
1999年の新規オープン点数は570にのぼったそうです。
こんな勢いで成長するファッションブランドは今後登場するのでしょうか?
こんな勢いで成長するファッションブランドは今後登場するのでしょうか?
・ファストファッションブランドの錦の御旗は「ファッションの民主化」
ファッション=注文服だった時代、ファッションは富裕層の為だけのものでした。
しかし、1980年代から登場しはじめたたファストファッションブランドは
ファッションの民主化を推し進めます。
ファッションの民主化を推し進めます。
H&Mは
「上流階級のためでなく、みんなのために」
とうたい、
ターゲットは
「贅沢を。あらゆる場所のあらゆる女性のために」
というキャッチフレーズでそれまで富裕層だけのものだった
最先端のファッションを全ての人に提供するようになりました。
・アメリカでシャツがつくれない
今からは想像が出来ませんが、
1900年にニューヨークで最も多くの労働者を抱える産業は服飾産業で、
縫製工場なども沢山存在していたそうです。
しかし、今ニューヨークに残っている服飾産業はデザインなどの企画系のみ。
その理由はより低いコストが求められたからです。
低賃金と低価格を求めてニューヨーク州外に進出しはじめたファッション関連企業は
1930年から40年頃には西海岸や南部にまで広がり、
1950年代には日本から、その10年後には香港やパキスタン、
インドから衣服が流入するようになりました。
アメリカの繊維工場や服飾工場の経営者たちは政治団体や陳情団を結成し、
多国間繊維取り決め(MFA)などの衣料品の輸入数量にさまざまな制限を加えますが、
1990年代半ばには北米自由貿易協定(NAFTA)が批准される事で
メキシコへの輸出関税が撤廃され、多くのアメリカ企業が裁断や縫製を
メキシコ国境付近の街で行うようになり、ロサンゼルスの服飾産業で働く何万人もが失業しました。
翌年には世界貿易機構(WTO)がMFAは不平等であるとの最低を下し、
その後は中国からの輸入量が飛躍的に増加する事になります。
MFAが完全に執行した2005年には輸入量の増加率は
コットンパンツで1500%、コットンのニットシャツで1350%に達し、
この年アメリカでは服飾関連の労働者1万6000人が失業し、
少なくとも18の工場が閉鎖に追い込まれました。
・服の質は下がり続けている
ファストファッションブランドの登場などによってここ数十年、
アパレル製品の大半の価格は落ち続けています。
しかし、その一方で高級衣料品の価格は上がり続けています。
アパレル製品の大半の価格は落ち続けています。
しかし、その一方で高級衣料品の価格は上がり続けています。
1998年から2010年までに高級婦人服の平均価格は2.5倍になったそうです。
多くの高級ブランドは理想的な顧客層を呼び込んでブランドを高級に見せるためだけに
利鞘を大幅につり上げています。
大衆向けの服は消費者の期待する価格が下がり続けているにも関わらず
人件費と材料費は値上がりしている為に市場に出回る服は粗悪になり続けています。
今日の格安ファッションは薄くて質の劣る生地や陳腐なデザインを
派手な色やプリントでごまかしているようです。
こうして、高級品から大衆向けまで、
殆どの服の質は下がり続けているのだそうです。
こうして、高級品から大衆向けまで、
殆どの服の質は下がり続けているのだそうです。
・ファストファッションとコピー
最近の米コンバース社のオールスター模倣訴訟に代表されるように、
山田耕史のファッションブログ: ファッション業界の常識が変わる?ラルフローレンがコンバースオールスターの模倣中止に同意。
山田耕史のファッションブログ: パクリとインスパイアの境界線とは?米コンバース模倣訴訟続報。
ファッションとコピーは切っても切れない関係です。
本書ははファストファッションブランドによるコピーにも大きくページを割いています。
山田耕史のファッションブログ: パクリとインスパイアの境界線とは?米コンバース模倣訴訟続報。
ファッションとコピーは切っても切れない関係です。
本書ははファストファッションブランドによるコピーにも大きくページを割いています。
Forever21はデザインを登用するとして悪評が高く、
これまで50回以上も著作権侵害で訴えられていますが、事実を認めた事は一度もないそうです。
H&Mには超大型のデザイナー集団が140人、Zaraには250人の専属デザイナーがいますが
Forever21には2007年になってもまだデザイン部門がなく、
Forever21はしばしばデザインをコピーしているのは発注先の業者だと主張しますが、
実際には業者はForever21からの要求にしたがってコピーをしているのが現実だそうです。
1980年代後半のH&MはForever21と同じ経営方針をとっていましたが、
ヨーロッパで著作権法にまつわる法的問題が深刻化し経営戦略を変更。
H&MだけでなくZara、MANGOといったファストファッションのデザイナーたちは
デザインをそのままコピーせず少し手を加えるように指示されているそうです。
・ファストファッションブランド愛用者も必読
本書ではこの他にも、大量消費により増加し続ける着られなくなった服が
どのようにリサイクルされているのか、
どのようにリサイクルされているのか、
現在の縫製工場実情、中国の発展による生産の国内回帰、
そしてアンチファストファッションとも言えるスローファッションについてなど、
現在のファッション業界が抱える問題を綿密な取材に基づき明らかにしています。
ファッション業界人だけではなくても。
普段自分が着ている服がどのように製造されているのかが
わかるようになり、自分の消費の仕方を改めて考える機会にもなるので
多くの人に読んでもらいたい一冊です。
最後までご覧いただきありがとうございました!
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このエントリを書いた人
山田耕史 詳しいプロフィールはこちら