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【書評】「堕落する高級ファッション」



【このエントリのポイント】偽ブランド品を買う事は犯罪の片棒を担ぐ可能性がある


こんにちは。

ロング丈のシャツを買ったはいいがいまいち似合わない

ファッションアナリスト山田耕史(@yamada0221)です。




以前読んだグッチに関する本が面白く、

山田耕史のファッションブログ: グッチってこんなに面白いブランドだったのか!【書評】グッチの戦略

ラグジュアリーブランドに興味が出てきたので今回はこんな本を読んでみました。


堕落する高級ブランド





この本も大変面白く、付箋もこんなに貼ってしまいました。



ちなみに出版が2009年なので、データなどは2015年の今と違うところもあると思います。

・ブランドの出発点は職人の工芸品


今日「高級ブランド」として括られる分野の製品の年間総売上は1570億ドル、

そのうちの60%は35の主要ブランドが占めているそうです。

ルイヴィトン、エルメス、カルティエといったブランドは

19世紀に身分の低い職人が王族のために

最高に美しい工芸品をつくったことからはじまったそうです。

ブランド=上流階級、というイメージがあったので

これらのブランドの成り立ちは私にとっては意外でした。

・ライセンス商法の生みの親はクリスチャンディオール


1950年代、オートクチュールを着る女性は世界中で20万人以上もいたそうです。

しかし現在、オートクチュールの顧客はたったの200人。

それでも高級ブランドが存在し続けられたのはライセンスビジネスのお陰と言っても良いでしょう。

クチュールのメゾンはニューヨークやサンフランシスコのデパートに

1年間限定のコピー権でパターンを売り、

米国社交界の婦人たちはパリに旅行しなくてもクチュールの新作を注文出来るようになりました。

また、中間階層の人々は米国のアパレルメーカーが

ディオールにデザインの使用料(1957年当時で2000ドル)のロイヤリティを支払い

ディオールのデザインの要素を取り入れたドレスやスーツを

50~60ドルの価格で購入していたそうです。

ディオールは中間階層が将来高級ファッションの主たる市場になる事を予測しており、

ストッキングをはじめにライセンスビジネスをスタートさせます。

・ファッションショーの目的はメディアに取り上げられる事


高級ブランドの代名詞とも言えるルイヴィトン。

パリコレクションに参加しているルイヴィトンのコレクションは

レディス、メンズ共にファッショントレンドを引っ張るトレンドリーダーとしても注目されていますが、

ルイヴィトンの全体の売上げの中で既製服の占める割合はたったの5%。

他の高級ブランドもルイヴィトン同様、売上げの中心はバッグや財布などのグッズ。

既製服の売上げは微々たるものです。

では何故高級ブランドがこぞって既製服のコレクションを発表するか。

その理由をベルナール・アルノーはこう語っています。

「いいか悪いかに関係なく、メディアに取り上げられることが重要なのです」

「第1面に記事が出るかどうかが問題なんですよ」

つまり、コレクションの目的は雑誌や新聞などのメディアに掲載される事。

既製服が広告塔となって多くの人の目に触れられる事でブランドのイメージを確固たるものとし、

バッグや財布、香水などの利益率の高いアイテムを多くの人に売るのです。

因みにクロエやダンヒルなどの既製服ブランドを抱える

高級ブランドコングロマリット、リシュモングループの売上げのほぼ半分、

経常利益の85%はカルティエが稼ぎだしており、

カルティエの利益の60%は時計だと言われているそうです。

・日本人がブランド好きな理由

欧米人が自らの富を誇示する代表的な方法は豪邸や広大な土地を所有する事。

ですが、狭い国土で人口密度の高い日本ではそれはほぼ不可能です。

代わりに日本人が選択したのが

「高価なものを身につけること」だそうです。

・高級ブランドと広告


高級ブランドは最近まで宣伝広告とは無縁の存在でした。

その考えを変えたのがジョルジオ・アルマーニやラルフ・ローレン、カルバン・クラインなどの

1970年代に台頭した世代のデザイナー達でした。

彼らはトップカメラマンとスーパーモデルによる世界的なキャンペーンを展開しました。

世界最大のブランドコングロマリット、LVMHの2002年の広告費は

売上げの11%にあたる10億ドル以上にのぼるそうです。

高級ブランドの稼ぎ頭といえば香水。

トム・フォードは

「初年度の売上げと同じ金額を広告宣伝に使うね。

2500万ドルの売上げを見込むなら、広告宣伝に2500万ドル使う」

と語っています。

・ブランドバッグにロゴが付くようになった理由


香水と同じく高級ブランドの収益を支えるのがバッグです。

売上げの大きなシェアを占める「イット」バッグを生み出そうと

どの高級ブランドも躍起になっています。

19世紀まで、バッグや鞄を持つのは身分のいやしい者がすることとされていたそうです。

近代的なバッグが誕生するのは20世紀に入り婦人参政権論者が登場するようになってから。

ハンドバッグを持つのは新しい自立のしるしとなりました。

1930年代、クチュリエはバッグに顧客の名前を入れるかわりに

自分たちのイニシャルをひそかにバッグに付けるようになりました。

それが高級ブランドがバッグでロゴを誇示するはじまりとなったそうです。

・あなたの自慢のブランドバッグ、実は中国製かも


ヨーロッパでの労働賃金の上昇と

株式上場により株主の配当金、収益向上の要求に応える為

高級ブランドはコストを下げることを余儀なくされます。

高級ブランドは自ら公言しないものの、

バッグの生産を欧州から中国に移して人件費を圧縮するブランドは少なくないそうです。

そのさきがけとなったのが米国ブランド、コーチ。

ですが、近年は中国も人件費が高騰しており、

更なるコスト圧縮を求めるブランドは

エジプト、マダガスカル、モーリシャスといった途上国に生産現場を移しているそうです。

・偽ブランド品を買う「覚悟」を持っていますか?

もっとも人気があって儲かる偽造品は高級ブランドのロゴがついたものだそうです。

ミウッチャ・プラダは

「この時代にロゴを排除することは到底不可能よ。

ブランドの認知を高めることは重要すぎるくらい重要。

ビジネスを拡大したいと願えば願うほど、ロゴを利用しなくてはならない」

と語っています。

高級ブランドは年間1億ドル以上もの宣伝費をかえてロゴの普及につとめます。

しかし、平均的な消費者にとって高級ブランドの商品は簡単には手が届きません。

飢えた消費者の欲求の応えるように供給されるのが偽造品です。

偽造品を製造するのは勿論真っ当な組織ではありません。

偽造品製造工場で働くのは人身売買の問題が絡む場合も多く、

それは児童である事も少なくないそうです。

タイのある偽造品工場では10歳以下の子供の脚の骨を折り、

膝から下を太ももに縛り付けた状態で作業をさせていたそうです。

とても痛々しい事実で、私もこうやって書いていて心が痛むのですが、

偽造品に手を出す場合、その偽造品はこういった背景で製造されているのかもしれないという事を

覚えておくべきだと思います。







※注
ここで述べられている内容は書き手の所属する組織・団体の主張を
代表・代弁するものではなくあくまでも筆者一「個人」としてのものです。



このエントリを書いた人
山田耕史


ファッションアナリスト

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