最近メンズエッグが休刊した事により、
いくつかお兄系ファッションの衰退についてのエントリを書いてきました。
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メンズエッグの終了は私の周辺でもかなり話題になっており、
それに関連して先日あるお客様から
「今後お兄系ファッションはなくなってしまうのか?」
というご質問をいただきました。
それに対して私は
「徐々に縮小するかもしれないが
少なくともここ数年でなくなる事はありえない」
とお答えしました。
その理由は。
お兄系に変わる「ヤンキーファッション」が登場していないから
です。
私がそう考えるようになったのは
最近この本を読み返したからです。
私の大学時代の恩師である難波功士先生の著書、「ヤンキー進化論」です。
Amazonの内容紹介を引用すると
日本人の5割はヤンキー的であり(!?)、彼ら・彼女らは大ヒットを生み出す一大文化圏である。
それにもかかわらず、ヤンキーは調査・研究対象として見過ごされてきた。
本書は、映画やコミック等の膨大な資史料をもとに、暴走族、ツッパリ、ギャル、オラオラ系...等々のヤンキー文化40年の変遷を一覧する。
という事で、戦後のヤンキーの生態が体系的にまとめられており、
映画や漫画などのサブカルチャーを軸にしているので
誰にでも取っ付き易く、楽しめる内容になっています。
ヤンキーのファッションに関してもかなり言及されているので
戦後のヤンキーファッションの大まかな流れは
この一冊でわかるようになっているのではないでしょうか。
特に私がありがたかったのが
巻末の「ヤンキー」」関連事象見取り図。
これを見ているとヤンキーファッションというのは
途切れる事なく続いててきたのだな、と感じます。
この見取り図を参考に
本書で取り上げられたヤンキーファッションを
掻い摘んでご紹介してみます。
60年代は井筒監督監督、島田紳助、松本竜介主演の
映画「ガキ帝国」に登場するような
ガキ帝国 : 星空シアター
リーゼントの学ランスタイル。
70年代前半は岩城滉一主演の「暴走族」シリーズのようなバイカースタイル。
爆発!750cc族
70年代後半から80年代には
今でもヤンキーファッションの代名詞となっている
特攻服が登場します。
80年代はツッパリがブームになる一方、
横浜銀蝿 全曲集 2013
嶋大輔 パーフェクト・ベスト
当時のトレンドだったニュートラファッションを取り入れたスタイルも
http://www.tetsu37.com/hitorigoto/1978/page01.html
流行していたそうです。
80年代後半から90年代に入るとチーマーが登場。
ヒップホップやレゲエなどの音楽ムーブメントから影響を受け、
いわゆる「B系ファッション」に代表される
ヒップホップ系ファッションがヤンキーファッションの主流になります。
その後00年代になると
ギャルのカウンターパートとしてギャル男が登場、
更にギャルの中から浮上したお姉ギャル系から
お兄系が生まれたようです。
…
と、日本のヤンキーファッション史をかなり簡略化して書きましたが
詳細が気になった方は是非読んでみて下さい。
で。
ここからがこのエントリの本題です(笑)
冒頭の
「今後お兄系ファッションはなくなってしまうのか?」
という問いかけに対する答えですが、
生まれていない
ので
ヤンキー達がお兄系から
新しいファッションに移行しようにも
移行先がない
と私は思うのです。
今回見てきたように
ヤンキーファッションは生誕から約50年
途切れる事なく脈々と続いてきました。
そしてその最進化系である
お兄系も生誕から既に10年以上。
かなりの長期政権となっています。
お兄系誕生以降で生まれたヤンキーファッションとして先述の
オラオラ系
SOUL JAPAN 2011年9月号
や
オラオラ系から更に派生した
ビタ男
BITTER2013年9月号
などが挙げられますが
これらは今の所マスには広がらず、
お兄系の一カテゴリにとどまってしまっている感があるので
お兄系の後継になるには力不足でしょう。
ではお兄系に代わるヤンキーは今後生まれるのでしょうか。
私は当分の間は難しいのではないかと思います。
最近のファッションは
トラッドファッションをベースとした「良い子ちゃん路線」が主流です。
例として10代に人気の雑誌、Samurai ELOからスタイリングを抜粋すると
Samurai ELO 2013年12月号
こんなに爽やか。
「ラフな着こなし」というキャプションが付いていても
かわいいもんです。
こんな風に、最近のメンズファッションのトレンドはヤンキーっぽさが皆無。
こういった状況で新しいヤンキーファッションは生まれるのでしょうか。
「AFTERお兄系」がどんなファッションになるのかは
今後のメンズファッションにとって
とても重要な事柄のように思えてきました。
もしかしたら今雑誌に登場している、
あるいは街を歩いている男の子のファッションの中に
もう存在しているのかもしれません。
そう考えるとなんかワクワクしてきますね。
※注
ここで述べられている内容は書き手の所属する組織・団体の主張を
代表・代弁するものではなくあくまでも筆者一「個人」としてのものです。